障害者雇用納付金制度とは

この記事で分かること
  • 障害者雇用納付金制度の内容
  • 法定雇用率以上の障がい者を雇用している企業には報奨金が支給される
  • 障がい者雇用の各種助成金の支給

障害者雇用納付金制度は、「障害者の雇用等の促進に関する法律」に基づく制度です。

この法律では、一定数の従業員を雇っている事業主に対して法定雇用率と呼ばれるものを設定しています。障がいのある方を雇用する際、バリアフリーなど、その方の障がいや特性に応じたハード・ソフト両面の環境を整える必要があり、雇用側の経済的な負担が伴いやすいという現状があります。

必要な設備を用意しながら雇用義務を果たしている事業主と、そうではない事業主の両者が公平になるように調整しなければなりません。

障害者雇用納付金制度では、上述した点を考慮しながら障がい者を雇用する事業主に対して調整金や報奨金を支給します。

参照元:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html

障害者雇用納付金制度の内容

法定雇用率を達成していない事業主から障害者雇用納付金を徴収

2024年4月から2027年6月の間、障がい者の法定雇用率が民間企業では2.5%(従業員数が43.5人以上の事業主が対象)、国や地方公共団体は2.8%、都道府県等の教育委員会は2.7%以上の割合で障がい者を雇用しなければなりません。

雇用義務のある企業が法定雇用率を達成できていない場合、本来雇用されるべき障がい者数に対して不足している人数1人につき月50,000円の納付金を納める必要があります。

達成していない企業にとってはデメリットに感じてしまいますが、義務を果たせばこれらを解消していけるでしょう。

参照元:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/000859466.pdf

報奨金を支給されるケースも

法定雇用率以上に障がい者を雇用している事業主に対しては、一定の調整金、もしくは報奨金の支給が行われます。

他にも在宅で就業している障がい者、または在宅就業支援団体を仲介して仕事の発注を行い、支払いを済ませた事業主に対して、特例調整金もしくは特例報奨金が支給されます。

在宅就業支援者を支援するためのものであり、自社の雇用ではない発注に対する制度のことです。金額や制度での不明点については行政機関や厚生労働省にご確認ください。

参照元:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html

障がい者雇用の各種助成金の支給

事業主が障がい者を雇用するにあたり、設備の整備や、雇用管理のために必要な介助をつける措置などをとった場合、助成金が支給されます。

支給される助成金には、以下のようなものが挙げられます。

障害者作業施設設置等助成金

障害者作業施設設置等助成金とは、障がい者を受け入れているまたは継続して雇用している事業主に対して、障がい者が障害を克服して作業を効率的におこなえるように配慮された施設や改造された設備の設置・整備をおこなう(賃借による設置を含む)場合に、その費用の一部を助成する制度です。

作業施設設置等助成金には、作業施設等の設置または整備の方法によって次第1種作業施設設置等助成金と第2種作業施設設置等助成金の2種類があります。第1種は「建築や購入」によりおこなう場合、第2種は「賃借」によりおこなう場合に支払われます。

第1種の助成率は2/3です。第1種の支給上限額は同一事業所あたり同一年度につき4,500 万円、支給対象障害者1人につき 450 万円、作業設備は1人につき 150 万円(中途障がい者は450万円)、短時間労働者(重度身体障がい者、重度知的障がい者または精神障がい者を除く)は1人につき半額となっています。

第2種の助成率は2/3です。第2種の支給期間は3年間、支給対象障害者1人につき 月13万円、作業設備は1人につき 月5万円(中途障がい者は月13万円)、短時間労働者(重度身体障がい者、重度知的障がい者または精神障がい者を除く)は1人につき半額となっています。

第1種作業施設設置等助成金を利用して認定された事例として、建物の構造上既存のトイレの改修が困難であり車椅子対応トイレを新設、既存のトイレの個室を拡張して車椅対応トイレを改修、和式トイレを洋式トイレに改修などがあります。

参照元:厚生労働省(https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/shisetsu_joseikin/q2k4vk000001wqqn-att/q2k4vk000001zfan.pdf)

障害者福祉施設設置等助成金

障害者福祉施設設置等助成金とは、事業主や事業主が加入している事業主団体が保健施設(保健室、洗面所、休憩室)や給食施設(食堂)等の設置・整備をおこなう場合、その費用の一部が助成される制度です。

助成金は支給対象費用の1/3です。支給対象障害者1人につき 225万円、短時間労働者(重度身体障がい者、重度知的障がい者または精神障がい者を除く)は1人につき半額となっており、同一事業所または同一事業主の団体につき同一年度当たり 2,250 万円を限度額としています。

過去に障害者福祉施設設置等助成金の支給を受けた事業主は、同一障がい者でこの助成金を支給することはできません。事業主が所属する事業主団体または事業主団体に属する事業主も支給対象障がい者が同じであれば、同一の福祉施設等を設置・整備する場合も支給されません。

参照元:厚生労働省(https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/shisetsu_joseikin/q2k4vk000001wqqn-att/q2k4vk000001zfan.pdf)

障害者介助等助成金

障害者介助等助成金は大きく分けると、職場介助者の配置や委嘱に関する助成金、特定の障害種別・疾患・特性のある方を対象障害者とする合理的配慮に関する助成金障害種別・特性を問わず支援が必要な対象障害者への合理的配慮に関する助成金の3つです。

職場介助者の配置や委嘱に関する助成金の対象者は「重度視覚障がい者や重度四肢障がい者」、特定の障害種別・特性のある方を対象障害者とする合理的配慮に関する助成金は「聴覚障がい者や身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者」が対象となります。ただし、身体障がい者や知的障がい者、精神障がい者は重度訪問介護サービス等の支給決定を受けていること、週所定労働時10時間以上が条件です。

障害者介助等助成金は支給対象費用に2/3を掛けた額であり、配置と委嘱で異なります。配置は、職場介助者に通常支払われる賃金の「時間単価×職場介助業務おこなった時間数」であり、委嘱は「委嘱1回あたりの費用」(同一日におこなわれる同一の介助者への委嘱は1回として算定)です。

支給上限額は職場介助者を配置する場合月額13万円、委嘱は委嘱1回あたり9,000円(年間 限度額あり)となります。

参照元:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000205998.pdf)

重度障害者等通勤対策助成金

重度障害者等通勤対策助成金には、通勤用バスの購入助成金や通勤用バス運転従事者委嘱助成金、通勤用バス運転従事者委嘱助成金、駐車場の賃借助成金など8つがあります。

通勤用バスの購入助成金は、5人以上の重度障がい者が通勤している会社が通勤用バスを購入するために支給されるもので、助成率は3/4、支給限度額は1台700万円です。

駐車場の賃借助成金は、自らが運転する自動車で通勤している重度障がい者が使用する駐車場を借りるために助成されます。助成率は3/4、支給対象障がい者1人につき月5万円、支給期間は10年間です。

支給対象費用は賃借面積が 28 ㎡以下の場合 支給対象費用=駐車場の賃借に要する費用です。28 ㎡を超えた場合は支給対象費用=駐車場の賃借に要する費用×28 ㎡÷駐車場の賃借面積の算定式で計算されます。

参照元:厚生労働省(https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/tsukin_joseikin/q2k4vk000001z5aw-att/nr78m40000002mo5.pdf)

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金は、多くの重度障がい者を雇用し、かつ、継続して雇用していると認められた事業主に支給されます。支給対象となる事業所は、作業施設や管理施設、福祉施設、対象障がい者は.重度身体障がい者や重度知的障がい者、短時間労働者を除く知的障がい者、精神障がい者です。

助成率は事業施設等の設置・設備に要する対象部分の費用×2/3です。特例の場合は3/4が支給されます。特例の場合は、特別重度障害者等のなかで3名以上支給対象障害者を受け入れている、地方公共団体等と一般企業の共同出資で立ち上げられた第三セクター方式の重度障害者雇用企業の事業主であり、支給限度額は5,000万円(特例の場合は1億円まで)です。

参照元:はたらくBASE(https://hataraku-base.jp/archives/%E9%87%8D%E5%BA%A6%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E5%A4%9A%E6%95%B0%E9%9B%87%E7%94%A8%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E6%89%80%E6%96%BD%E8%A8%AD%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E7%AD%89%E5%8A%A9%E6%88%90%E9%87%91%E3%82%92%E6%B4%BB)

まとめ

障害者雇用納付金制度は、「障害者の雇用等の促進に関する法律」に基づく制度のことを指します。障がいのある方を雇用する場合、障がいや特性に応じたハード・ソフト両面の環境を整えるなど、経済的な負担が伴いやすいです。

雇用義務を果たしている事業主と、そうではない事業主の両者が公平になるように調整する必要があります。そのような点を考慮しながら、障がい者を雇用する事業主に対して調整金や報奨金が支給されるのです。

雇用義務のある企業が法定雇用率未達成の場合、本来雇用されるべき障がい者数に対して、不足している人数1人につき月50,000円の納付金を納めなければなりません。達成できていないとデメリットに感じてしまいますが、義務を果たせばこれらを解消できます。

事業主が障がい者を雇用する場合、設備の整備などを行う際に、助成金が支給されます。このような助成金を活用して、障がい者雇用の推進していくことが重要です。