独立系のIT企業であるシステムサポートは、年々社員数を拡大するにあたり障がい者雇用についても各拠点で積極的に募集をかけたり面接を行ってきましたが、拠点のある都市部ではここ数年採用に苦戦していたようです。
社員のほとんどがエンジニアであるため、専門的なスキルを持った障がい者を雇用することが難しいという側面もありました。
農園メンバーと交流をする中で「仕事が楽しくなった」「毎日楽しく働けている」という意見を聞き、システムサポートのコンセプトである「社員にとっていい会社」が実現できていると感じています。
また、全社員への周知に向けて社内報や企業ホームページ、全社オンライン集会などで農園での取組を共有し、障がい者雇用への理解が進んでいることを実感しており、自社での受け入れも積極的に行っていきながら企業全体としての障がい者雇用を推進しています。
全国各地に支店や営業所を展開する総合建築会社・大本組では、これまでも積極的に障がい者雇用を行ってきました。ところが、障がい者の高齢化が進んで退職者が増え、若干とはいえ法定雇用率を下回るまでになってしまったそうです。
人材紹介会社やハローワーク、学校などとも連携しながら積極的な障がい者雇用に取り組みましたが、危険な作業が伴う建設業ゆえに、就労場所が限られることもあり、なかなか採用に至りませんでした。
農園型障がい者雇用支援サービスを知り、現地を見学した結果、障がい者が安全かつ安心して働けることを確信したのが、導入の決め手になりました。
ものづくりを通じて地方創生やSDGs推進を図り、社会に貢献するという点においては、農業と建設業も同じというコメントにもあるように、大きな枠組み・目的の中では本業も農業も同じだと捉えています。本部スタッフが農園で元気に働いている障がい者と触れ合うことで理解も深まり、さまざまな課題を共に解決していけるような一体感も社内に生まれています。
同社はこれまでも、主に事務管理系で障がいのある方の雇用を行ってきました。しかし約2,000名の従業員を抱える会社として、法定雇用率に見合った人数の雇用の場の創出は厳しい状況でした。
同社の業務はお客様のオフィスで作業するケースがあり、事業内容と障がいのある方とのマッチングは困難だと判断したようです。
農園型障がい者雇用支援サービスは安全面の配慮がありリスクが低く、会社としての社会的責任を果たす場所と位置づけました。
会社を挙げて「社会貢献」「多様性の推進」への取り組みが始まりました。農園の存在が経営の大切な一環であるとして、社内認知度も高まっています。
例えば社長や役員が農園を訪問し、スタッフと一緒に汗を流し交流を楽しむ。そしてその様子を社内報で全社に周知することで、障がい者雇用の意義に多くの社員が認識する契機となったそうです。
同社では障がい者雇用の他社の例を多数研究しましたが、離職率の高さなど難しさを耳にする機会が多くあったそうです。
成長を続ける会社としては、より安定した雇用を求めたい。ただ、外資系の会社のため、採用は即戦力の中途採用が基本である環境に、障がい者を迎え入れることが、果たしてお互いのためになるのだろうかという悩みがありました。
その中で知った障がい者の雇用の場としてファームを活用するアイデアは、食文化を担う同社のベクトルと一致すると直感。早速ファームを見学したところ、開放的で清潔な環境に感心し、導入を決めたそうです。
農園型障がい者雇用支援サービスについて、障がい者の働く場としてのファームの存在は、自然なこととして社員から大変好意的に受け入れられたとのこと。
農園長と障がい者、本社のトライアングルを上手く機能させることで、初めてファームの健全な運営は実現するのだという学びもありました。野菜を媒介とすることで、社内交流が年々活発になっていったそうです。
事業内容ですが、まず主力事業として国内外におけるEC事業を展開しています。具体的には国内ECサイトを海外対応するほか、海外のマーケットプレイスに出展する際の支援をしています。元々当社は、自社内での雇用にプラスして、イチゴ農園(関東エリア)で障がい者雇用を行っていました。農園で作ったイチゴはスタッフへ社内販売しています。
そのような中、事業拡大に伴う従業員の増加に伴い、障がい者雇用をさらに促進していかないといけないという状況でした。ただ単に雇用して、その後マネジメントを怠るのではなく、雇用したスタッフをしっかり自分たちで管理し、関係構築を図りたいという明確な考えがありました。
農園を導入して一番良かったのは、関東でイチゴ農園を活用していますが、そこで働くメンバーとコルディアーレ北九州農園で働くメンバー間の交流が生まれたことです。障がい特性や程度は異なりますが、作ったイチゴをコルディアーレ北九州農園内でのクリスマスパーティーで使うために送りました。その際、実際にイチゴを使っている様子の写真やメッセージ、手紙などでのお礼が農園メンバーに伝わり、モチベーションにつながったと思います。
フルサト工業株式会社は、鉄骨建築資材や配管資材事業を展開している企業。グループの 株式会社ジーネットでは、主に機器工具事業・機械設備事業・住宅設備事業を展開しているのが特徴です。
自社でも障がい者雇用についてさまざまな取り組みを行っています。ハローワークはもちろん、就労移行支援所や支援学校と連携しながら、職場見学や実習の受入れもしています。
採用後は、配送センター・工場、本社間接部門の配置が多くなりやすいです。しかし、一方で近年働き方改革を積極的に取り組んでいるため、少しずつ障がい者が従事する業務が減少するようになっているのが課題でした。
コルディアーレでは、現地の農園の管理をサポートしている様子を見て、導入後のサポートをイメージでき安心しました。導入前は、法定雇用率を下回っていたのでしたが、導入後は法定雇用率を改善できました。これまでの人事担当者や配属先部署の業務切り出しといった負担が軽減されたため、他の業務へのリソースの確保につながりましたね。
また、コルディアーレ農園は、社内報への掲載により、会社として非常に大切な取り組みをしていると周知されていると思います。
パナソニックエイジフリーは、愛知県豊明市、春日井市で「エイジフリーファーム」を運営しています。社内ノーマライゼーション意識の向上をはじめ、安定した障がい者雇用環境の形成を実現しているのが特徴です。
現在、デイサービスやサ高住、有料老人ホームなどを、全国約370ヶ所で展開。各事業所に障がい者スタッフを配属する案も検討していました。しかし、介護の現場で必要とされる身体的負担やコミュニケーション能力などを考えると、障がい者スタッフ自身への負担が大きくなるのはもちろん、現場での雇用負荷を生む不安を拭えませんでした。そのようなときに出会えたのが、わーくはぴねす農園だったのです。
「わーくはぴねす農園」を実際に見学した多くの管理部門の責任者が、農園で行われている人間味あふれる営みに感動し、導入の流れが一気に形成されたと思います。
成果としては、獲れたての無農薬野菜が大好評で、お礼のメッセージがたくさん寄せられています。人事部が編集する壁新聞にも何回か取り上げられ、全社的な認知度もアップしていきました。社員のノーマライゼーション意識が進化したほか、社内での人の「尊厳」に対する想いが深まったと思います。
株式会社オズマピーアールでは、医療、飲食、観光から地域ブランディングまで、あらゆるコミュニティ領域で社会や生活者と企業、商品などのパブリックリレーションズ(PR)を推進しています。「オズマからふる農園」は2016年12月に開園しました。農園長と知的障がいのあるスタッフ3名によるメンバー構成ですが全スタッフが農業は初めての経験で、手探りでのスタートとなりました。
情報産業に関わる業務内容上、障がいのあるスタッフへの具体的な仕事の切り出しが難しい状況でした。バリアフリー化ができない環境であることをはじめ、情報セキュリティ対応など本社に障がいのあるスタッフを受け入れるのが厳しい状況でした。
実際にファームの様子を経営陣に見てもらったことが決め手となりました。日差しが差し込むファームの様子を目にした経営陣からの評価はよかったです。障がいのある方たちが生き生きと働く姿はもちろん、笑顔に感銘を受けた経営陣も納得、翌日には参入に向け具体的に動き出せました。
利用効果は、2016年の導入以降、継続して法定雇用率をクリアできていることです。全社的なSDGs意識の向上に貢献するなど、農園が社業の一翼を担う欠かせない存在に成長しつつあります。
農園型障がい者雇用支援サービスは、障がい者を雇用したい法定雇用義務のある企業のためのものだと考えられがちですが、それ以上に社内へ与える影響が大きいことが事例からもわかります。
よりいっそう、企業としての社会貢献や多様性の受け入れが求められる昨今。日本全国で共生社会を実現するために、一般就労において障がい者が抱える様々な悩みや課題を解決し、多様な形の働き方の創出や、障がいへの理解を深める意識改革が急務となっています。農園型障がい者雇用支援サービスはそういった課題の解決にもつながる解決策だと言えます。
今回は農園型障がい者雇用支援サービスを導入した事例をご紹介しました。障がい者を雇用するためには、作業環境の調整やスタッフの研修など、さまざまなコストがかかるなどデメリットに目が向きがちです。しかし、4つの事例を見てみると、農園で元気に働いている障がい者と触れ合うことで理解も深まったり、農園の存在が経営の大切な一環であると、社内認知度も高まったりする企業も見られます。野菜を媒介とすることで、社内交流が活発になった企業も見られることから、障がい者雇用が促進するだけではなく、さまざまなメリットが期待できます。農園型障がい者雇用を利用すると、企業は社会的責任を果たせるのはもちろん、従業員の多様性を高めることにもつながるでしょう。