特例子会社の制度自体が生まれたのは意外に古く、1976年のことです。
健常者と障がい者が共に働く環境づくりに取り組む企業が多かった半面、一般的な職場では社員の理解や設備面などで多くの課題があり、障がい者の雇用が実現しにくかった時代でもありました。
そこで、障がい者に配慮した職場を別の会社として立ち上げることで、それらの課題を解決しようと生まれたのが特例子会社の制度です。
特例子会社という別会社にすることで、障がい者の特性に見合った就業規則を策定できたり、障がい者の雇用に特化した助成金を受けられたりと、さまざまなメリットがあります。
何より、親会社やグループ企業全体の障がい者法定雇用率に換算することが認められます。本来、障がい者雇用は企業単位で雇用率を算出しますが、特例子会社は例外的にグループ企業全体に適用できるのです。
実際、特例子会社の制度は障がい者雇用を推進する大きな契機となりました。企業の職場は変わらずに、新たに障がい者に向いた職場をつくることが可能で、さらに相当額の助成金も得られるからです。
制度発足当初は重度の身体障がい者や知的障がい者の雇用が増え、近年では精神障がい者や発達障がいを抱える人の雇用の受け皿として広く活用されています。
人材派遣業を展開するマンパワーグループ株式会社の特例子会社として、2001年に設立されたジョブサポートパワー株式会社。総従業員の9割以上が何らかの障がいを抱える社員で、その大半が重度障がい者です。
テレワークを有効に活用した作業環境づくりが特徴で、オフィスや他の在宅勤務者とスムーズにコミュニケーションがとれるようなシステムを構築しています。
ベネッセグループの施設運営などを手がける特例子会社として、2005年に設立された株式会社ベネッセビジネスメイト。
難易度が高く複雑な業務オペレーションをシンプルかつユニバーサルな工程に組み直すことで、さまざまな障がい者や中高年層の障がい者など幅広い雇用に成功しました。
特別支援学校との連携、発達障がいを抱える大学生への就労支援にも積極的に取り組んでいます。
システム開発から運用・保守までワンストップのサポートを行なう株式会社NTTデータの特例子会社・株式会社NTTデータだいち。拠点は北海道から沖縄まで国内を広く網羅し、電話受付業務から農業支援まで広範囲な職域で障がい者雇用の創出に取り組んでいます。
もっとも多くの障がい者が従事するのはITサービス関連業務で、親会社の事業と親和性が高く、障がい者のモチベーション向上にもつながっています。
前述のとおり、グループ企業全体で障がい者の法定雇用率を算出できるのは大きなメリットです。
また、特例子会社は障がい者に配慮された職場だということがある程度認知されているので、障がい者を募集した際にも採用しやすいようです。
もちろん障がい者が多く働いているので社員同士でコミュニケーションを取りやすく、企業によっては精神保健福祉士など障がいに精通したスタッフを配置している場合もあるので、それらが定着率の向上につながっている一面もあるでしょう。
法定雇用率の算出の面でグループ企業全体にメリットがあるとはいえ、特例子会社も一般企業と同様に利益を出して存続していかなければなりません。
しかし、特例子会社の多くはグループ企業のサポート業務にとどまり、利益を出しにくい構造になっています。このような経営的な課題をどうやって解決していくかを考えていかなければなりません。
また、社員がキャリアアップを望んだとしても特定子会社の業務ではそれに応えにくい場合も多いでしょう。
まとまった人数の障がい者雇用が必要で、ある程度の定型業務を切り出すことができる企業は特例子会社の設立が向いていると思われます。しかし、規模的なメリットを感じられないのであれば費用面で大きな負担になるでしょう。
当サイトで特集をしている農園型障がい者雇用支援サービスでは、農業という新しい分野に取り組むことで、新たな業務を創出する形で、障がい者の積極的な効用を実現しています。以下でサービスについて詳しく紹介します。